自然エネルギーってなんだ(1)

自然エネルギーとしての、太陽光、太陽熱、水力、風力のエネルギー源はいずれも太陽であり、太陽の中で起こっている核融合反応という原子力がエネルギーの源泉である。地熱は、実は、多くの熱源が地球内部の放射性物質が出す熱で、原子力、正確に言えば崩壊熱がエネルギー源と言われている。結局、自然エネルギーはすべて原子力と言っても過言ではない。


原子力は自然あるいは宇宙に備わった原理を、人類の知恵が獲得し、世の中を豊かにするための科学技術として発達してきた。科学技術故に欠陥や限界もあるが、これも人類の知恵で乗り越えていきたいと切に思う。


自然エネルギー体験ランド」で教えたこと


情報館の閉館後、しばらくして「自然エネルギー体験ランド」という企画に元科学館員として加わったことがある。自然エネルギーについて子供たちに教えるという、一種の模擬小学校で、実際は子役を使ってスタジオで工作教室の撮影をし、その動画をYou Tubeにアップするというものだった。その先生役を任され、授業の流れから、工作の企画、試作、部材購入に合わせて、授業での工作の手順、テキストやホワイトボードの使い方に至るまで綿密に決めた。


自然エネルギーはやや古い言い方で、昨今は再生可能エネルギーの方が主流となっているが、大きな違いはない。ただ、再生可能エネルギー化石燃料に寄らないことを強調していて、何か政治的な臭いが感じられるのに対して、自然エネルギーの方は素直な感じがする。また、自然エネルギーは、太陽光、太陽熱、水力、風力、潮力・波力、地熱の範囲で、発生源が太陽と地球に限定されていて、小学校の理科の授業には馴染む気がする。


nandemo-lab.cocolog-nifty.com

以下では、「自然エネルギー体験ランド」のテキスト(配布物と解説)を紹介したい。工作物の紹介については省略した。工作物の概要は、ココログ「科学館員の独り言」の「自然エネルギー体験ランド」に掲載してあるが、詳細には触れていない。なお、発電による自然エネルギーの利用が本企画の趣旨なので、発電が中心になっていることに留意されたい。


水力発電とスクリュー船」


水力は、から、動力としてのらしに役立ってきました。川の流れを利用した水車、や水力発電。逆に水の流れを作って、それを利用する道具や機械もあります。


水力のいろいろを学んでみましょう。


地球温暖化対策として、今、小規模の水力発電が新たな期待をされています。産業革命よりも前、蒸気機関などの動力が発明されるまでは、水力や風力が動力として利用されていました。水力で粉をいたりしていたのです。
蒸気機関やエンジンやモーターが発明されると、逆に水の流れを作ることができるようになり、な形でらしに役立っています。は分かりやい例ですが、水道にも水を送るポンプが利用されています。


水力を利用した交通機関もあります。動力で動く船は,スクリューなどで水の流れを作り、その反作用で動いています。
水力発電模型や、水力を利用して動くスクリュー船の模型を作って、水力利用のあれこれを体験してみましょう。


次の質問に答えてください。


1.水力とは
水力とは、(  )が動いて起こす力(またはエネルギー)のことです。
水力を作り出している元は太陽ですが、海や川の水を暖めて水蒸気に変え、水蒸気が冷えて雨や雪として地上にり、川となって流れる(  )の動きができます。
(   )には重さ(質量)があります。
(   )の重さは、1立方メートルの大きさで、約1トンです。
深さ1.5メートルの(   )が面積1平方メートルの底面を(垂直に)す力は、約1.5トン(正確には、約150ニュートン)にもなります。
流速1メートル(/毎秒)の(   )が持つエネルギーは、面積1平方メートルあたり、約500ジュール/秒(=500ワット)です。
水力エネルギーは、流速の3乗と面積に比例します。水道のから出る水の流速との面積では、流量を毎分8リットル、の面積を約1.3平方センチメートルとすれば、での流速は約1メートル/秒となるので、水力エネルギーは、(     )ワットとなります。


水力の利用
① 水力の利用には、自然の水の動きを利用するものと、水の動きを作って利用するものがあります。自然の水の動きを利用した水力の例をあげてください。
(                                      )
②(人工の)水の動きを作ってその水力を利用する例をあげてください。
(                                      )
③ 板(平板など)にめに水の流れが当たると、水の流れの下流にされる力()のほかに、水の流れに直角の方向にされる力()が生じます。を利用した例をあげてください。
(                                      )
④ 水力発電は、水力で水車を回し、水車につながった(   )を回して発電します。


【解説】

1.『水力』について:
一般的な『水力』の説明では、水力発電を中心に捉えて、水の流れの落差を利用する場合として位置エネルギーの観点から説明しています。
ここでは、『水力』を水の動きと捉え、いわゆる水力以外に、潮力(潮流=海流と潮汐)や波力も含めて扱っています。そのため、水の位置エネルギーではなく、運動エネルギーの観点から説明していて、『風力』との比較が容易にできるように配慮しました。


風力発電とハイドロプレーン」


風力は、から、動力としてのらしに役立ってきました。自然の風を利用した風車、そして、今は風力発電。逆に風を起こして、それを利用する道具や機械もあります。


風力のいろいろを学んでみましょう。


地球温暖化対策として、今、風力発電が期待されています。産業革命よりも前、蒸気機関などの動力が発明されるまでは、水力や風力が動力として利用されていました。風力で粉をいたり、水をくみ上げたりしていたのです。ヨットなどのも風力の利用といっていいでしょう。


エンジンやモーターが発明されると、逆に風を起こすことができるようになり、な形でらしに役立っています。やは分かりやい例ですが、エアコンや冷蔵庫にも風を送るファンが付いています。ドライヤーやにもあります。そう、パソコンの中にもありますね。
風力を利用した交通機関もあります。ハイドロプレーンという浅いなどで使われるボートや、き上がって動くホバークラフトなどです。広い意味では、飛行機やロケットも風力を利用しています。


風力発電模型や、風力を利用して動くハイドロプレーンの模型を作って、風力利用のあれこれを体験してみましょう。


次の質問に答えてください。


風力とは
風力とは、(   )が動いて起こす力(またはエネルギー)のことです。
風力を作り出している元は太陽ですが、地球の陸地や海洋の暖め方にいができることと、それに地球の自転のが重なって、複雑な(   )の動きができます。
(   )には重さ(質量)があります。
(   )の重さは、直径1メートルのゴム風船の大きさで、約677グラムです。
風速10メートル(/毎秒)の(   )が面積10平方メートルのを(垂直に)す力は、約1.3トン(正確には、約132ニュートン)にもなります。
風速10メートル(/毎秒)の(   )が持つエネルギーは、面積1平方メートルあたり、約647ジュール/秒(=647ワット)です。
しかし、この風力エネルギーをすべて利用することはできません。最大でもこの59%、約(    )ワットが理論上の限界(ベッツ係数)とされています。
風力エネルギーは、風速の3乗に比例します。日本の住宅地の年間平均風速は約3メートル/毎秒ですから、直径1.12メートルの風車(面積1平方メートルに相当)では、平均(   )ワット程度にしかなりません。


風力の利用
風力の利用には、自然の風を利用するものと、風を起こして利用するものがあります。自然の風を利用した例をあげてください。
(                                     )
自然の風はどうして起こるのでしょうか。理由を考えてください。
 (                                     )
人工の)風を起こしてその風を利用する例をあげてください。
 (                                     )
自然の風と人工の風のいをあげてください。
 (                                     )
板(平板など)にめに風が当たると、風の下流にされる力()のほかに、風に直角の方向にされる力()が生じます。を利用した例をあげてください。
 (                                     )
風力発電は、風力で風車を回し、風車につながった(    )を回して発電します。


【解説】

1.自然エネルギーと電気:
自然エネルギーは、風力、水力、太陽光・太陽熱、地熱などの自然に存在するエネルギー(またはエネルギー源)で、太陽や地球に備わった無尽のエネルギーを利用するものであり、再生可能エネルギーの仲間です。古くから利用されていますが、最近では電気エネルギーに変換することで、小規模の分散型電源として昔とは違った活用法が期待されています。
エネルギーは形を変えることができますが、電気エネルギーは、動力や熱の供給以外に、照明や情報・通信など、さまざまに活用できる特徴があり、便利なエネルギーとして広く利用されています。自然エネルギーを電気エネルギーに変えて利用するのもそのためです。


2.電気二重層キャパシターについて:
電気二重層キャパシターは、普通のコンデンサーよりも桁外れに大容量のコンデンサーで、蓄電池並みに電気を貯めることができます。また、瞬間的に大電流を流すことができる特徴があるので、現在は、携帯電話などの機器の電源安定化に活用されています。
自然エネルギーの多くは出力が変動するので、出力を一定に保つためには、蓄電池などの電気を貯める装置が必要になりますが、将来、電気二重層キャパシターが大型化されれば、蓄電池に変わる手段として期待されています。
電気二重層キャパシターと蓄電池の違いは、蓄電池の電圧がほぼ一定であるのに対して、電気二重層キャパシターは電流を流すと電圧が直線的に低下します。そのため、電気二重層キャパシターを使用する場合は、電圧を一定に保つ回路が必要になります。


以下は、「自然エネルギーって何だ(2)」に続きます。


(※id:TJOid:apgmmanから受領したWord原稿を元に再構成、代理投稿したものです)