教育用GM管開発を振り返って(7)
自作できることを基本的なコンセプトとして、開発を進めてきた。ここでは、標準型GM管を例にとって、自作の心構えやスキルについて話してみたい。
必要なもの
元より高価な測定器などは使用していない。最小限必要な計測器でも、たかだか1万円台である。しかし、買い溜めた工具類は、1点数千円でも総額は計り知れない。以下は、クリアケースGM管と高電圧電源の製作に必要な工具類で、「らでぃ」の実験集にも掲載されているが、これだけの工具を一度に揃える必要がある。ただし、*印が付いた工具は、手間を省くための工具なのでなくても構わない。
- 可変速電動ドリル*
- ピン・バイス
- ドリル刃(φ1.5、φ2.5、φ3.0、φ3.2)
- リーマー
- スパイラル・ドリル刃*
- 面取りドリル刃*
- ドライバー
- 組みスパナ
- はんだごて
- はんだ吸い取り器
- はんだごてスタンド
- 電圧調整器
- ラジオペンチ
- ニッパー
- ピンセット
- ブラシ
- やすり
- クリップ
- 木片
- マーカー
- ワイヤーストリッパー
- はさみ
- カッター
- カッティング・マット
- 定規
- ケース用ゲージ*
- GM管用ゲージ*
- 穴あけポンチ(φ2)
- 金づち
- マット
このほかに、完成後の動作不良などの対応には、主に導通や電圧を測定するために、テスターまたはデジタルマルチメーターが必要になる。*印が付いた工具は、5台とか10台など製作数が多い場合に労力を減らすための工具なので、体力や筋力に自信があったり、1日に何台も製作しなかったりする場合はなくてもよいが、あると楽に作業ができる。
製作にあたっては、当然、部品が必要になる。同じ例では、以下のような部品を購入する必要がある。秋葉原の各店の通販で購入したが、必ずしも1店では揃わない。
- (1)小型ボリューム 5KΩB
- (2)テストピンジャック(黒)
- (3)テストピンジャック(赤)
- (4)5mm赤色LED ESL-R5A33ARCN114
- (5)トランジスタ 2SC2120-Y 35V800mA
- (6)006Pアルカリ電池 9V
鈴商
- (1)タカチ電機工業 PB型プラケース PB-2
- (2)スライドSW(3P・中) 19-3P
- (3)サトーパーツ ラグ板2列×5P L-3522-5P
- (4)マル信無線電機 RCAプラグ(黄)MR-568M 黄
- (5)RCAジャック(カラーリング付き、黄)
- (6)ビス 真鍮 ナベ 2×5mm 100個入
- (7)電池スナップ(スケルトンタイプ)120mm I-120
- (8)goot 精密プリント基板用ハンダ SD-62
- (9)セラミックイヤホン(プラグなし)
- (10)耐熱電子ワイヤー UL3265-24 L-10 赤
- (11)耐熱電子ワイヤー UL3265-24 L-10 黒
そのほかにも、小物があって、
モノタロウ
別途購入
- 高圧電源基板 @200×100
- 被覆電線 0.75mm2 20mm×100
- 熱収縮チューブ φ3.0 10mm×100
- 熱収縮チューブ φ1.0 10mm×100
- ピン針 ×100
- 黒画用紙 50mm×170mm×100
- シール 赤・丸 φ5×200
- シール 黒・丸 φ5×200
- 両面テープ マット 15mm×7mm×200
- 両面テープ プラスチック用 15mm×30mm×100
- アルミテープ 75mm/10×60mm×100
- 金属シール 10mm×20mm×200
これらの小物は、秋葉原の店舗で見て購入したり、近くのホームセンターや文具店で購入したりしたものである。
これだけの、購入品のリストを作り、どの店にあるかを調べて発注するだけでもかなりの労力と時間を要する。当然、それ以前に、開発の構想があり、回路図や設計図の作成があり、といってもポンチ絵しか描いたことはないが、試作があり、必要に応じて改良があり、等々のプロセスがあるが、実はそれ自体が、いわば自作の醍醐味である。自作は出来上がってしまえば、それを使用するか、飾っておくか、誰かに譲るか、しか選択肢がない。これを見て、萎えるようなら自作などやらない方が良い。挑戦心が湧いてくるようなら、見込みはある。
工具には取り扱いによってはケガをするものもあり、緊張感をもって作業する必要がある。当然、手作業なので出来栄えにも考慮しなければならない。できるだけ美しく作るのも自作の楽しみの一つと思う。電子回路には、はんだ付けが必須の作業である。まず、きれいにはんだ付けができないといけない。でないと、トラブルに悩まされるうえに、修復にも手間がかかる。自作では、ユニバーサル基板という2.54mmピッチの基板のホールにはんだ付けするが、かなり細かい作業になる。慣れればともかく、最初はかなり窮屈に見える。実際、注意しないと、隣のホールにはんだがつながってしまう。はんだごての選定も重要で、こて先の細い方が細かい作業に向いているような気がするが、熱量が小さいのではんだが溶けにくい。はんだも工業製品では無鉛はんだ使用が常識だが、無鉛はんだは融点が高いので、はんだ付けに失敗したときの修復が難しい。自作では有鉛はんだの方が無難と思う。言うまでもないが、はんだごてによる火傷には注意したい。はんだ付けの作業には、こて台についているスポンジを頻繁に使った方がよい。予めスポンジには水を浸して軽く絞っておくが、こて先をきれいにするとともにこて先の過熱を防ぐ効果がある。ユニバーサル基板では、プリント基板と違って配線は自分で自由にできるが、配線の多重交差はできるだけ避けたい。後で、不具合があったときに、はんだ付けが原因でも、怪しい個所にアクセスしにくくなるうえ、修復の際に配線を一旦外して再度はんだ付けする個所が増えてしまう。
図で見る通り、高圧電源の電子回路は冷陰極放電管用の高圧ユニットをジャンク品で使用しているだけで、ユニバーサル基板はない。倍電圧整流回路は10Pラグ板上に組んでいるので、この場合はむしろワット数の大きいはんだごてを使用した方が良い。話しが後先になるが、この冷陰極放電管用の高圧ユニットはジャンク品なので、現在は手に入らないと思う。鈴商で購入したものだが、鈴商は営業を続けているので、問い合わせて在庫があれば手に入るかもしれない。ほかに、冷陰極放電管用の高圧ユニットの代品を探す手もある。
(※id:TJOがid:apgmmanから受領したWord原稿を元に再構成、代理投稿したものです)